― 閑話 ―
[平原の少年が州都に養子に行くこととなり、さてその先の名を聞いたときは些か驚いたものである。
ハーウェン、と。
名を確かめるように呟いた時の表情は、ディークや他の者にも知られていたか。聞かれれば知った名だと答えていたし、信頼置ける人物だとも口にしたろう。
彼を巻き込むを恐れ周囲を警戒し、15年前より彼にも連絡をしてはいなかった。けれど6年前、エドルファス少年の移住の後に数度だけ遣り取りめいたことをしたことがある。
それほど大した遣り取りではない。
こちらから送られたのは、偽名で記した少しの挨拶。
代わりに送られてきたのは、見覚えのある薬が少しばかりだ。
それででも旧知の無事を喜び、祈る心は通じていたものと恐らく思う。]