[彼の席の横の通路を、幾人が通り過ぎたか、彼には気付く由もない。
冷えたコーヒーと対峙して早40分、いい加減喉が乾いてきた。
意を決して震える手を伸ばし、カップをカチャカチャ言わせて口元まで持っていき、震える黒い水面を吸い込もうとした時]
ブホッ、ゴホッゴホッ!
["大丈夫ですか?>>247"という声に驚きむせこんでしまう。]
すっ、すみません!すみません…!
テーブル…!すみません…!!
[気が動転して着ているシャツが茶色に濡れたのにも気が付かず、女性に平謝りしてコーヒーまみれのテーブルを拭いている。
どう見ても大丈夫ではない。]
いえ、あの、具合が悪いわけでないんですが、その…
[彼女の落ち着いた声で徐々に平静を取り戻す。
しかし不安の原因は、誰にも打ち明けるわけには行かない。]
…すこし心配事があって、気が気でなくて……
[
(第一、目の前の彼女が追手《敵》じゃない保証があるか?)
頭に思惑が過ぎるが、今はぎこちない微笑みを返すので精一杯*]