―ある日 王都へと続く道の半ばの森で―
[その日、アイリは要塞に半数の騎士団員を残し、500名の一軍を率いてある深い森を目指していた。
日々あがる報告その中で、最近目立つようになってきたのが森の怪物の話である。
その報告をまとめた内容はこうだった―――。
「灰色でカサカサとした肌は悪魔のように乾き、大きく二本の牙をむき出しにして雨を降らせながら吠え渡る。
細長く絡みつく一本の腕を顔の前で振り回すこともあれば、時にはそれで棒を振り回し、その巨体は6Mを超えて木をなぎ倒す」。
アイリは武者震いをした。
国境を厳重に守ってはいるもののここ最近は至って平穏であり、武功をたてる機会などは遠ざかっている。
舞台となる現場は王都とゾネスの中間であるからして王宮にもその報告はあがってきているだろう。
本当に怪物が存在するのならば退治しなければいけない。
武門の誉れとして王にゾネスの白狼騎士団の存在を示すには打って付けの相手であり、出世ばかりを考えている王宮の者達に万が一でも先に奪われてはならぬと闘争心に火をつけた。500の女騎士団は全員が武装した馬に乗り、煌びやかな銀色の鎧を纏って森へと向かう]