― 森の中 ―[ネクタイを引かれ離れることは叶わず目の前でゆっくりと動いた喉元に、血を広げるよう指を滑らせた。赤とも茶色とも違う、そぐわぬ白が舞い降りて言葉を伝える] 憎い?[紅茶色の瞳が大きくなる。その奥に揺れる熱は、指先から伝わってしまうだろうか] 違う ただ残念なだけで……[そこまでの強い感情はなかった。小さな痛みと、もしかしたらほんの少しの安堵。それが本当で、口にした言葉は紛い物だった]