―― Nルーム ――
[しんと静まり返り、空気すら動かないNルームに整然と並ぶ銀色のカプセル。
上半部の蓋が透明になっているのは見て取れる。
部屋の入口近くに佇み、装置へと語り掛けるトールのことばを聴けば、表情は見えずとも、その声が震えて、涙を帯びているようにも聞こえ。]
リクエスト、聞きそびれ、な……
[ぽつり、と。息をするように微かなひとりごと。
演奏を聞かせると約束していた。
聞きそびれ『た』、と、言葉を最後までつなげることが出来なかったのは。
恐らくは、小声で囁こうとしたから。
彼女の身に起こったことは、言葉として聞かされてはいたが。状況を見ていない青年の瞼の裏に何故か浮かんだのは、咄嗟に背中に隠そうとしていた、手の甲の小さな傷痕だった>>1:497
サシャの身に起こったことは知らずにいるが、ドロイド達に連れ去られたものは希望がなくも、ないだろう。そして、マリエッタも。
けれど――…]