[けれど、怖くて震えが止まらない。
シメオンが『人狼』だったのだろうか。いつから?どうして?
目を逸らすこともできず、語る言葉に耳を傾ける。>>245
『この人』の言う『この男』は、シメオンのことだろうか。ならば、シメオンは...の、みんなの死を願っていない。シメオンは、シメオンだ。
例えシメオンが『人狼』だったのだとしても、彼の優しさに嘘はない。
恐怖に震える中で、口元には笑みが浮かぶ。]
…愚かなんかじゃない。
それはシメオンの優しさだよ。
―――貴方は"誰"なの?
[問えば、答えはあっただろうか。
先ほどの身のこなしを見れば、到底逃げられる相手ではない。鋭い爪のある手を伸ばされて、覚悟を決める。ぎゅっと目を閉じ、思い出すのは顔も覚えていない人の笑い声。
結局"彼"を超えることはできなかったな、とぼんやり思う。
生きていれば、いつか会えると信じていたのだけれど、でも、きっともう―――]