……フランツを、覚えている?
ああ、でも。直接会った事は、結局……無かったわね。
[病弱な弟は、彼女が本家に居た間は、外に出る事もままならず。
それどころか。与えられた卵を孵したはいいが、まともに空も飛ばせられぬまま、恐らく今も自室の寝台からこの空を見つめている。幼い姿のままの、愛竜と共に。]
どんな子であろうと。私の家の跡継ぎは、フランツただ一人。
……例え、何があろうとも。
[それは、母を亡くした意地も絡んでいる。
幸い父は、その後新たな妻を娶る事は無かった。それは、母への懺悔故か。……濃厚なのは、外聞の悪い自死と、落胤の存在を念頭にこれ以上の跡目争いを起こさぬ道を選んだ線だが。それはともあれ。]