[屋敷周囲の不穏な気配を感じないほど鈍くはない。
使用人達が慌てて領主に耳打ちをする。わかっているの意を示して手をあげる。]
お前らは普通にしてろ。
俺だけでいい。――あ、あと例の書類持ってきてくれ。
[使用人が大慌てで、指示されたものを執務室から取りに行く。
さて。はっきり言うと大した実戦戦闘能力はない領主である。
穏便に済ませる方法は、二つあるが。
向こうの出方次第というところか。]
あ。
[小さくやべ、と声に出して。]
タッくん、ちょっと行ってくる。
[念のために旧友に手を振って、イングリッドを探しに行った。]