ふふ、わからなくてもいいのよ。
だって……全て分かってしまうのも、それはそれでつまらないでしょう?
[温和な微笑みに喜色を隠し、男の口元に指を添え、囁く。
男が起き上がる動きを見せたなら、阻害しないよう腰を浮かし、起こそうとする腕に手を這わせ、立ち上がった]
あら、丁寧にありがとう。
私はエレオノーレよ。エレオノーレ=ヒース。
Ballschmiede――
どこかで聞いたような……でも、気のせいよね。
私達、初めて会うもの。
[ふと小首を傾げたが、遠慮がちに問いかける内容に、思案するように腕を組む。
けれど、それはほんの短い間。
悪戯を思いついたように、少しだけ子供のような笑みを見せて近づければ、血色を取り戻した唇へ己のそれを重ねた]