― 『世界樹』の枝 スヴァーグニル ―
[まともに立てずに膝を折る、猛毒の苦しさに表情を蒼褪めさせながらも、まず悔しさが先走りだしていた。
アイルリートは大地の守護者、勇者の血脈だ。
だからそんな大地の守護者として、名に見合う実力と成功の結果は当然の事だし、失敗や油断は以ての外とし続けていた。攻撃の力に劣るとはいえ、防御と癒しの魔法に長けて来た自分は、事実、失敗しなかった。
だからか、最初の蛇との戦闘という経験を経ても、アイルリートだけは他の七人とは違う。
飽くまで勝てて当然、いつもどおりに倒せばいい、それがフラクシヌスに必要な事だ、そんな誰より平常な心で挑んでいたから。
難敵との戦いという経験を通じて、成長をみせてる七人よりも、伸びが明らかに薄かった。
そんな気付きにくい欠点や課題までを、ルートヴィヒが見越していたのか否かは知る由もないが。
少なくとも、戦いを重ねる内に、決して万能ではないアイルリートだから突き当たる壁は存在するわけであり。
図らずも、セイジと正反対の性質のアイルリートだからこそ、セイジが師から受けた論は実証されていた>>1:366]