『ウルケルはこの先───…』
[いつも挨拶程度しか交わさぬ男と、ほんの短い立ち話をしたことがある。ゲオルグ・ヒューベンタール。今はウルケル海軍最高司令官となった男と。
この男と姪の間に縁談があったこと、そしてそれが断られたことはアンディーヴ卿の耳にも入っている。甥と呼び損ねた男相手に、短い言葉を交わした。あれは確か、フェリシアの海戦の後であったか。
このままではいられんでしょうな、と。
海軍を率いる男の言葉は明快だった。
小国が独立を保ち、その自主自立を保つためには相応の努力が要る。変化を柔軟に受け入れること、それもまたその一つだ。
近年急速に勢力を拡大し、ウルケル海軍傭兵部隊との衝突も増えつつあるモルトガットという名の帝国、やがては、かの国と交渉を行わねばならないだろう。
その折には必ずや、大きな変化を起こさざるを得なくなるはず。
ならねば滅びるだろうと、かのオルヴァル滅亡にも立ちあった男は続けた。]