― 廊下→自室 ―
[廊下は片付けられてはいたが、血の匂いは簡単には消えず。
男はむせ返るようなその芳香に眉間に皺を寄せる。
血肉を求める本能は嫌が応にも刺激され、口と鼻を手で覆いつつ、逃げるように自分の部屋に入った。
自分の隣りの部屋で行われていた行為など知る由もない。]
ぁ…。
[―あぁ、喉が渇く。
自室に入れば落ち着くかと思ったが、そうではないらしい。
試しに水差しの水を飲んでみたが、それで癒せるわけもなく。
自分は快楽に弱い。
それは自覚していた。
―だからきっと、一度他人の血を口にすれば…。]