[己の中には願いや理想が存在しない。そんなことを何度も主張すれば、現実味が薄れていくような言葉だが、紛れもない事実である。
だからこそ、己におすすめというものを聞いてくるお客は手に余ることが多い。この村で言えば、エルナは特に、店主のおすすめを聞きながらゆっくり買い物を楽しむのも趣味である>>126らしく、別段苦手に思っているわけではないのだが、期待にそえていないと感じることが多かったりする。
もちろん、お勧めを聞きたいという望みは理解しているため、その要望には応えようとするのであるが、如何せんお勧めできるものが何もない。パン屋に置かれているパンは、全て自身の望みで創り出したのではなく、他人の理想を借りて生み出したものだから。その価値は自分では計れないのだ。]
中々に、難儀なものだね。