―バルコニー― ……星が綺麗だなぁ。[空色の瞳も、今は藍を映し濃く染まっている。冷たい風に飛ばされぬよう帽子のつばを押さえ、バルコニーから身を乗り出すように空を仰いでいる。かつて人の身において、この視力は失われかけた。其れが回復したのは父たる白絽侯の御力によるものだ。眼昏になることを思えば、空腹時に夜盲となる、眩しさに弱い、そんなのは微々たることだ。逆に言えば彼の力を持ってしても、回復できたのは此処まで、ということなのだろう。少なくとも男はそう解釈している]