仕立て屋 エルナ

[あぁ、このまま逃げ出してしまおうか。
頭に過ったが、この村から脱出する術などないことを、つい先ほど知らされたことを思い出した。>>187

背中中に走る悍ましい寒気とともに、心臓がドクンと、一つ、大きく脈を打った。

証拠は、隠さねばならない。
だが、ゲルトの遺体を、今ここでどうにもすることはできない。せめて、この忌々しい左手だけは、皆の前で隠し通さねばならない。

だからと言って、話し合いに参加しないようでは、自分が怪しいと白状しているようなもんだ。

一度家に戻り、長袖の服に着替えてから談合室に向かおう。それでも、よく見ると左手に包帯が巻いてあるのが見えるし、フリージアは不自然な服装の変化に気付くだろうが。]