[今すぐに逃げ出して、人買いたちよりも早く村に着くことが出来れば、自由になれるかも知れない。突如降って湧いた希望に、リゼットは熱に浮かされたように。ふらり立ち上がる] 『――リゼット?』[眠っていた筈の姉の声が聞こえた。けれど、少女は振り返らない。振り返ってしまえば、もし、姉の絶望の眸を見てしまったらもう走り出すことなど出来なくなるから。 ――こうしてリゼットは姉を見棄てて、独り逃げ出したのだ*]