[ 平和だと民の多くが思っていた。
――あるいは 思い込みたがっていた。
けれど、それは"事実"ではなかったから
不穏な噂が広まるのは遅くはなかったのだ。
…絵描きの小娘一人でも
民の不安を煽ることが叶うほどには。 ]
…まあ、政を考える立場ではない
ボクやきみが幾ら理想を唱えたところで
結局は為せない者の絵空事でしかないけれど。
ラメールはこれからどうなってしまうのか…。
それを語るのはもっと先のことだろうけど――、
空想を描く画家の立場としては一つだけ言えるね。
[ 一か月も経てば真新しいサーベルも
軍人としての所作も多少こなれて見えるものの。
けれどその実、
口にする言葉は聊か理想に偏っているように思えた。 ]