[一先ずの船上の仕事は片付き、上官への報告も終えた。後は船が島に着くのを待つばかりだ。ファミルの前を退いて、意図せず時間が空いてしまった。明確な休憩時間というものは無いし、休めるときには休まなければ。そういえば、軽食を取ってきたまま手をつけていなかったことを思い出した。]
………。
[特に空腹な訳でもなかったが、食べられるときに食べなければ。さて。どこで食べよう?配給所のすぐ近くにはちょうど適した客室があるが、それ故乗客の出入りもあるだろう。何だか気が引けた。]
[暫く考え、デッキの反対側、船体の後方に進むと、そこにしゃがみこみ、鞄の中から取り出したサンドイッチの包装をとく。一口齧ると暫く咀嚼する。ハムだった。]
…タマゴがよかったな。
[船後方から見えるのは、切り裂いた海を置き去りにしていく光景ばかり。既に本土はとうの昔に見えなかった。ただ島に運ばれていく自分を感じながら、今朝から初めてひとごこちついたような、心許ない様な思いが胸を擽った。]