[>>171 こんな話をしたことがないな、と。ぼんやりと思った。
母の殺害。そんな悍ましさを孕む話を、……愉快ではない話を。
口にする理由はなかったから。
ただ。他に出せるものが。
手の中にあるものしか、出せるものがなくて]
――……良い夢と悪い夢、か。
混ざっているから、苦しいのかな。
お前はもっと、別の夢を見ていいと思うんだが。
[>>172彼の懊悩の理由を知らず、語る言葉。
感謝、と彼は言った。
……冷たい筈の鎖に交じる、儚い温かさ。
恋しさを利用して絡め取る重さを。
それに似たものを、知っているような気が、した]