[軍人は死ぬものだ、と。
かつて口にした時の、あの人の表情はどうだったろう。
記憶は古く遠い日差しの中に淡く霞んでいる。
ただあの時見交わした淡い紫色の双眸、その色を覚えてる。笑顔の奥に遠い痛みを抱え続けたままの、その瞳を。
ファミル・アンディーヴの死がシコンにまで知らされるのはいつ頃であったろう。補給ついでに、出入りする帝国艦が伝えでもしたろうか。
知れば彼女を知る民は嘆いたろう。
或いは中央に逆らったことに不安を持つ者の中には、これで自分たちは助かるだろうと幾分安堵の息をつく者もあったかも知れないが、概ね、人々は女領主の死を静かに悼んだ。
ファミル・アンディーヴの死。
それが電信を通じて首都カルボナードに、彼女の叔父アンディーヴ卿>>1:662へと届けられるのは彼女の死からどれ程の後になるだろう。]