―回想・二年前―
[リゼットの故郷は、白銀の村から山を幾つも越えた地にある僻村だった。
貧しかったけれど幸せな時は、あっという間に過ぎて。
数年にわたり続いた凶作と戦に少女の村は疲弊し、貧困に喘ぐ両親はリゼットたち姉妹を人買いに売りとばしてしまう。
両親に裏切られ棄てられた絶望と、
人買いに奴隷のように扱われる過酷な旅に、
もともと身体が丈夫ではなかった姉は、日毎に心身を病んでいった。
毎日のように酷使され、打たれ、罵倒されて。
心を病んだ姉に運命を呪う言葉を聴かされ続けても。
それでもリゼットが耐えられたのは、大好きな姉を――家族を助けたいと願ったからだ]