― 城館・ホール ― >>242[森の匂いに包まれていた気がしたけれど、浮上した意識が認めたのは建物の天井だった。先程までいた廊下よりは明かりが多く、壁紙もシーリングメダリオンも豪奢なものである。同じ建物なのかどうか。横たえられたソファの布も上等で、父の──今は異母兄の暮らす城よりもずっと洗練されている。] …あー[そんなことを考えられるくらいには自由だと気づいた。あの声が消えている。相変わらず、身体はどこか自分のものではないような気分だったけれど。]