[再びはっと我に返る。
一瞬記憶が飛んだような気がした。
――何故か、この場に居てはいけないような気がした。
用事だけ済ませて早く帰ろうと、サロンから用意した包帯、常備薬、その他諸々を在るべき場所へと並べる。
未だ漂う血の残り香。]
……っ……。
[先程アデルが眼前で苦しそうな様子を見せていたのを思い出す>>205。
そのようなことを考えたのも束の間、その場に膝から倒れ落ちる。
未だ起き上がれる力は残っていた。
せめて室外に出ないと、と膝だけで入り口まで身を引き摺り歩く。
数分掛けて廊下に出ることには成功したが、
顔面蒼白のまま、近くの壁に凭れ掛り座り込んでしまう。]