あ、ドクター・ジークムント。
あの人いい人だよなあ、前に俺が間違えて医務室行ったときも、
追っ払わないで話聞いてくれたし。
今度食事一緒に行きたいって、思ってたんですよ。
[いい薬を処方してくれるだろうという言葉にと頷きながら、彼女の言葉の続きを聞く。
その表情が、ふ、と一瞬、固さを帯びた。
“いざというの時に、心身の病や不調、損傷のあるものを
優先的に支援や保護できるよう”]
……。
[返答が咄嗟に返せずに、息継ぎをしたその合間に、差しはさまれた次の言葉に、
あー、と返答に詰まった。
もし医療データを照会するというのなら、遅かれ早かれ分かってしまうことではあるし、まったく仕方がないと思う。
――けれど、それをいま、ほんの少し引き延ばしたいと思ってしまったのはどうしてか。]