今は、非常事態で自分が死ぬかと思えば、
それはみんな、混乱もするし、
心にもないことを言う人だって、いるかもしれない。
全部終われば、きっと、また分かってくれる。
――… それに、こんなときだっていうのに、
マーティンの後を託された責任のこと、考えて、
エディとハーランのこと、想って。
自分だって命が危ないときなのに。
だからさ、無責任なこと言っちまうみたいだけど、
すげえ頑張ってるように、俺には見えるんだ。
ドロシーには、これから先も時間があるんだから、
いつかは、マーティンみたいに。
[ゴールデン・グルトップが幻――その言葉に対して、今、自分が言えることなどないのかもしれない。
もう船を降りた身であるのだから、その思い出に温められて、大切な存在であったとしても、
いま渦中にあるあの船の皆のことを、知った口で語る資格はないのだろう、けれど。
ハーランは人狼であったのだろうか、やはり、その可能性の方が高いようには思える。
けれど、彼もまた、ドロシーにとって大切な“仲間”であったには、違いないのだろう。]