[「辛ければ、いつでも、お手を。」
忘れ得ぬ言葉。
幼少時はなによりも嬉しい言葉だったが。]
……いえ、ジャン。
覚えていてよ、懐かしいわ。こんな所で会うなんて。
[温度のない、乾いた返答。
懐かしい言葉は、今ではとても空虚に感じられた。少女が一番辛かった時にその手が差し伸べられることはなかったのだから。
だから少女は呼び止めない。
約束を翻意して突然に居なくなった「兄」が立ち去る>>236のを、じっと、見送る。]
私と同じように人の身を捨てたから、
だからあなたは居なくなったのね。
[誰に言うでもなく呟いた。]