― いつか ―
[闇の訪れは突然だった。
彼の生きてきた世界は酷く平穏で、それが突然に終わりを迎えようなどとは思いもせず――生業とする学び舎で常と変わらぬ日を過ごし、同業の者や学生達が賑やかに笑いさざめく、それが日常…で、ある筈だった。
けれど夜の中より這い寄った闇が、一瞬にして日常を奪う。周りの者が順に倒れ伏し、命を与え損なっては失われていくのをなす術もなく逃げることも叶わずにただ見る]
(――や、めろ…)
[凍った喉からは音は紡ぎ出されず、自らとは別の最後の命に闇が覆いかぶさる]
「う、あぁぁぁぁぁ…」
[首筋に獣の如き牙を突き立てられ、いのちが喪われていく]
「――これも、駄目か…」
[呟きが洩れ、闇が、彼を見た]