― 閑話 ―
[ 15年前、男はオルヴァルでライフルを手に入れた。それは破格の値で売られていて、当時の男の収入からすれば、本来なら望むべくもない性能のものだった。
値は安くとも品質も確かで、狙撃兵としての役目も多くこなした男にとっては頼りになる相棒とでもいうべき存在だった ]
「お前のライフル、確かユルド社製だったよな?」
[ オルヴァルの敗戦からしばらくして、同僚の一人がそう尋ねてきたことがある ]
ああ、そうだけど?
「知ってるか?ユルド社ってあの戦争の間も帝国に武器流してたって噂」
[ この頃「あの戦争」という言い方をされるのはウルケルにとっても手痛い記憶となったオルヴァルの戦のことと決まっていた。そして男は確かにその噂を知っていたから、ああ、と頷いた ]
まあ商人てのは...そんなものだろう。どっちにしても武器の性能には関係ないしな。
[ 苦い想いも無くはなかったが、その武器に命を助けられてきたのも確かだったから、男は当たり前に、そう答えた ]