……。[ぎり、と覆面の奥で歯噛みする。 一瞬の後に、双眸から痛みは消え、酷く静かなものに戻った。 疾駆は、易々とは止まらない。 男は彼の馬を避けるように、斜め前方へと騎馬を駆けさせた。 橋まであと少し。 抜いた剣を抱え込んだカサンドラの喉元に当てる。 実際は刃を避け、慎重にフラーを押し当てた其れは、彼の角度からは女の命を質にとっているように見えただろうか。 ――併走する男の側に、ちらりと目をくれる。 彼の隻眼は男の行動に、ほんの一瞬、怯んだ様に見えた。]