ー過去:捻くれた子どもー
……嫌よ。ぜんぶいや。
生きていくのが嫌なの。
[目に大粒の涙を溜めて、黒い石飾りの付いた鋭利な短刀を喉元に向ける少女。
その水の膜の張った目は、目の前の男 ー部下にあたるらしいー を睨み付けた。
部下の腰には、短刀の鞘だけがあった。
既に宇宙へと飛び立ったシルバー・メリー号の船内で。
生きていく理由も意味も分からず、死にたいと強く望んだ当時の私。]
[事の始まりは、軍が兵器を開発しようと計画したことからだった。
物理、化学、工学……そういった兵器は既に出回っていたから、次に軍が目を付けたのは生物学の分野であり……。
倫理、道徳、常識……などと、表では綺麗事を並べているものの、そんなものは化けの皮。裏ではどうでもいいことなのだ。
武力が落ちれば国力が落ちる、ならば強い国をつくるためだ……と、倫理や道徳は後回しにされる。それが必然。]