― ホートン砦 ―
なんだよ。思ったより綺麗だな。
[ティレルの荒れようは散々なものだったけれど、ホートン砦はもうすこしだけ秩序の側に残っていた。
砦に入ったヤコブは、違いに釈然としないものを感じながら歩いて回る。
こと砦の中心部、守備隊長の部屋はいくらかの紙が床に散らばっている程度で、ほとんど汚れてもいなかった。]
あれ。これ…。
[部屋の中に入って床に散らばる書類を眺めれば、ソマリアードの署名が散見される。
視線を上げれば文机の引き出しが半ば引き出されたままになっていた。>>40
興味を覚えて覗きこめば、こちらにもソマリアードの署名がある。
それはどうやら手紙で、宛名を見ればひとつ息を呑んだ。]