[突風や真空の刃などはなかった。ただ、微かに耳鳴りのような気配がして、前方に居並ぶ黒鎧の一部が内側から砕けて崩れ落ちた。空気だけを振動させ、鎧を共振させて内側から崩壊させる。風精の力を借りた、守りが固いもの相手の常套手段だった。指向性の"見えない音"に晒された鎧は、砕け散らずとも脆くなっている者もいるだろう。**]