[だが少年にとっては優しい、父なのだ]……家族の話か。最近したっけ?[思い浮かぶのはキアラに家族の話をした時のこと。話し終えればキアラの家族のことを訊いて――――家族のことも覚えていないと知ることになった。記憶喪失だとは父から聞いていたがこれほどとは。店の窓から射す陽光を受けて胸元のコインがきらり、と光っていた。少年が見る限りいつもつけているそれ。宝物みたいだ、と呟いて、許可も得ずに触ろうと手を伸ばし―――]