― 魔王の天幕 ― ……ウェルシュか。[ 足音を聞いて、テオドールはゆっくりと顔から手を離した。 人払いをしていたのに物怖じもせず、無邪気かつずうずうしく入りこんでくる人間は、他におるまい。 それでもつい許してしまうのは、犬にまとわりつかれているような気になるせいだろう。 ひと噛みで人を殺せる、実に凶悪な犬だが。 ] ベリアンから使いを言付かった?[ ベリアンの警告>>205を聞いて、小さく噴き出した。 ] 成程。確かにそれは俺が頼んでいたものだろう。 ……外の荷車だな。