[少数民族。――その言葉に、きり、と唇を噛む。
何処まで知られているのか。
いや――『ヒンメル』からそれは辿れない。
ヒンメルが、ボルドゥの民と名乗った事は一度もない筈だ。士官学校が喪われた今は、尚更。
自らの出自は、学長と――恐らく彼により記入された書類にしか残ってはいまい。
そう言い聞かせてはいたが、不安は消えず。
やれやれ、という調子を装って囁いてみる]
……ほう? 教えてほしいものだが。
そんな資料を、何処で手に入れたというんだ?
[彼が自らの足跡を追っていた事は知らなかった。
――卒業してからも、故郷の詳しい話はしていなかったと、その記憶も手伝っていた故かもしれない]