[この発作の一件は、シロウと打ち解ける切欠となり。それ以降は少しずつ、挨拶をしたり、言葉を交わしたりできるようになって。気が付けば、養い親とはまた違う意味で懐くようになっていた。飾らない感情の発露ができるのは、その現われ。そうして、新たな日常の中で積み重ねた一つ一つの事象は。見えないあかい色の向こうを追う事よりも、この場所で見える青の先を見る事を選ばせて、でも。……何か足りない、と。そう、思う気持ちは、棘のように刺さったまま、今でも片隅に残っていた。**]