[首に回る腕の持ち主を睨みつけながら嫌そうに顔をしかめる
そもそも自分は彼が嫌い…いや、苦手なのだ
ーー気味が悪くて…]
〜回想・10年ほど前〜
[夜遅く、赤い髪の少年は目が覚めたのでベッドから出てぼんやりとリビングへむかった。すると両親が何かを話していた。
彼の家は地域の政治に携わる…いいところの家系というもので、きっと今日も遅くまで仕事の話をしているのだろうと思った。自分なんかより仕事や家柄を優先する両親の姿は見慣れたものだがそれでもたまには甘えたくなるもので…]
かあ様……とう様…[眠い目をこすり二人の元へ恐る恐る近づく]
「あら、コンラート目が覚めてしまったの?ちょうどいいわ、こっちに来なさい」
[いつもよりほんの少し柔らかい母の声、嬉しくなって側に駆け寄ると父の声がふってくる]
「明日領主様がこの近くをお見えになる。くれぐれも失礼のないように過ごしなさい」
[それだけ言われまた部屋へと入れられる。
たった数分の会話だが、それでも大好きな父と母とお話ができた。ご機嫌で静かに眠りについた]