[……唇に彼女の息がもうかからないことを確かめると、ヴェルナーはそっと身を起こす。
あの時よりも随分と立派になった衣服の襟元を弛め、彼女からのたったひとつの贈り物を取り出す。(>>2:+93)
(>>3:+34)名と花紋を削り取ったことは、ついぞ言えぬままだった。
己の運命が再び彼女へと繋ぎ合わせられた大図書館でのできごとが、走馬灯のように脳裏を過ぎる。]
リュカ。
……シメオン。
[(>>64>>*15)自らの願いを叶えるために"異邦人"を利用した彼らが"罪"と呼ばれたのだから、己がエリザベートとともにあったことも、きっと"不正な"歴史なのだろう。
けれど、誰の断罪も届かなかったこの"罪"に、今やどれほどの意味があろうか。
万感の思いで見つめても、己の罪の証は何も答えてはくれない。
決めるのはお前自身だ、とでも言いたげに、ただ規則的に揺れるだけだ。]