[傍目から見れば、闇精の酔狂。
本人にしてみれば、伴侶との豊かなる生活の演出。
愛妻にとっては―――、夫が引きずり込む毒沼に見えるかもしれない。>>234]
――…ようこそ、イングリッド。良い湯加減ですよ。
此方が空いています、どうぞ。
[露出と縁の薄い男もこの時ばかりは裸身にて気分上々。
儀式のように彼女を仰いで、瞼を伏せる。
隔たりの硝子を取り除かれ、強い銀の眼差しが彼女を捕まえて。
誘うように開いた腕から垂れる涓滴。
広い湯船で、態々己の腕中へと招く分かり易い様。
―――尤も、彼女を呼びに行った魔人形が、「ごゆっくりどうそ。」と笑みも創らず告げた語と、自らの足湯の準備を始めたことで、今後の展開など聡い彼女には、見当付いているかもしれないが。]