− 館の廊下 − >>164>>165[後輪の分だけ高くある視界のもと、敵手の得物が形を変えるのを見る。ルマニの手妻師のような、だが種も仕掛けもない技。相手の頭上へと振り下ろしたリュートは黒の籠手に打ち払われ、不用意に掻き鳴らされた弦の弾ぜる不協和音と木質の軋みを伴って砕ける。く、と腹に力が入ったのは、次の攻撃を予測してのものではない。だが、悲憤も何も晒せぬままに、引き絞られた弓から繰り出されるような拳が腹へと打ち込まれた。]