……私は、幸せです。
[偽らざる本心だった。
形の上では主と臣下に過ぎなくとも、褪せることも枯れることもない花を胸に抱き続ける日々が幸福でなかったなどと、どうして言えようか。
その告白を聞いて、皇太后はゆっくりと数度瞬く。
目尻の皺をつたって、涙がひとつ枕へと零れる。
『もう一度……、
今年も、故郷へ──帰りたかった……』
息はしだいに細く、弱くなってゆく。
いま医師を呼び戻せば、もしかすれば少しは生きながらえるだろうか。
けれど、ヴェルナーはそうしなかった。
──彼女の死を、独占するために。]