― 修道院側/北岸 ―
[ 流星の如く空を奔る火矢が、浮橋へと降り注ぎ、炎と煙をあげる。渇いた葦を燃やす炎はむしろ小さく、燻された材木からもうもうとあがる煙の方が勢いは強い>>208そして、風は南西 ]
全員、口と鼻を覆え。
[ 騎手であれば必ず馬の身体を拭く布の類は備えがある、その布で兜を被る者はその上から、兜を着けぬ者は直接顔の下半分を覆った ]
行くぞ...!
[ やがて、号令一下、20騎の騎兵は、先駆けた隊長の後に続き、橋に向かって一列となって走り出す]
『敵兵だーっ!』
『通すな!盟主様をお守りするんだっ!!』
[ 煙に噎せて混乱を見せる長物部隊も、突っ込んでくる騎兵を見れば必死で応戦の構えを取る。
先を行く盟主を護らんと、馬上の騎手達に向けてそれぞれの得物を突き上げ、振り回して奮戦する集団は、やはり侮れぬ敵だった ]
退けえええええっ!!
[ 先頭奔る、騎馬の上、槍の一閃が、群がる数人を、次々と突き倒す ]
怯むな!怯めば落ちるぞ!一気に駆け抜けろ!!
[ 少しでも止まれば、忽ち囲まれて馬から落とされる、そうなればおしまいだ、と、声を張り上げるが、それでも、振り切れず、落馬する者、闇雲に突き上げられた槍やフォークに突き落とされる者もある ]