― いつかの出来事 ―[引き取られたばかりの頃は、何も思い出せない事に不安を感じる事の方が多くて。特に、一人でいるとそれに囚われて──その結果、発作を起こす事が多々あった。そんな時は大抵、縋るように括った尻尾髪を引っ張っていた。実際に縋っていたのは、髪ではなく。見えない記憶の中の、幼馴染の存在だったのだけれど]