[――…唯。
窓の外に映る空の色はどんよりと重く。
こんな日は…幼い時分に母から聞いた恐ろしい話を思い出す。
人から獣へと自由にその姿形を変えて人を喰らうという化物の昔々の御伽噺。
それは本当にあったことなのか、それとも母の作り話だったのか。男は知らない。
物心着く頃に母は他界してしまって、もう聞くことは出来無くなってしまったから。
勿論、少し前に何処かで話されていたこと>>1>>27>>34なんて知る由もなく、パン屋へ戻るかどうしようかと考えながら、宿屋を後にしたのだった。
カウンターに置かれた、個室の鍵を…一つ。
通りざまに失敬すれば…かちゃり。服へと乱暴に突っ込んで。]
――宿屋→