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ここはヴィクトリアの部屋。
シルバー・メリー号客室の一つ。
物音一つ、時計の音一つしない
しんと静まり返ったこの部屋に
ヴィクトリアの私物などない。
────…いや、一つだけあった。
テーブルの中央に置かれた紙コップ。
その中に入れられた、一輪の薔薇の花。
既に元気をなくしているその花は
花びらがたった一枚付いているだけだ。
先に本体から離れた花びらは茶色く変色し
コップの周りに散らばっている。
" "
最後の花びらがはらりと落ちた。
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