それだけは、駄目だ。
[いつもの笑顔を見せる努力を最大限に払って、首を横に振った。それとは何か、頑なに明らかにしないまま否定の姿勢を明らかにする。]
お兄ちゃん、お前の望みならどんなことだって叶えてやりたいけどな?さっきお言われたことだけは、絶対に聞いてやれない。
パメラがどんなに辛い想いをしているか分かっていても。すごく苦しんでいる姿を見て、助けてやりたくても。超えてはならない一線はある。
万が一それをやってしまったら、俺はお前のお兄ちゃんを辞めなくてはいけない。
[淡々と発してはいるものの、分かってくれと必死に懇願する思いから、声が僅かに震えた。
獣の心を持っていても、出会ってから今まで大切に守ってきた妹を手にかけたら、自分にとっての世界は本当の意味で終わる。一度腹をくくったらまず変えたことのない男は、話し終わるとぎゅっと口をつぐんだ。
食堂を出て行くパメラ>>226に、分かったとだけ返答した男は、休憩したのに先ほどよりも疲れた表情で椅子に深く座りなおした。*]