[――視界に入った彼女の髪色は。
あの頃よりずっと深い色になっていて、一目ではわからない。
あの世間知らずなか弱い少女には見えない。―だから、わからない。
ただ、少し、一瞬だけ。
故郷の大地のように真っ赤な髪を見て、太陽を連想して、芋づる式に一人の少女を思い出す。]
(――いや、まさか。)
[髪色が年齢を追うごとに濃くなる、というのはよくある。
ブロンドが栗毛になったり、明るいジンジャーが濃いジンジャーに変わるなど、よくある話だ。―しかし、それだけで印象は大きく変わる。]
どうか、よろしくお願いします。
[ドロシーを彼女の方へ押して、呼び止められる前に踵を返そうとする。
左手の指輪。紋章と、王家の指輪。それが、なによりテオドールである象徴だけれど。小さなものだから、気づくかどうかわからない。*]