[「先生」に初めて出会ったとき、自身の境遇について話をした。
故郷の話は界隈では有名で、今でも原因を解明すべく研究している人も少なくない。「先生」も専門にはしていないものの、時間があるときに調べているということだった。
「あの時『ガルー』を用いたワクチンが開発されていれば、あるいは君の家族は助かったかもしれないね」
雑談の中で出た「先生」の言葉。
「まあ『ガルー』自体がまだ謎の多い危険種だから、夢物語でしかないけどね」と話は続いたけれど、ずっと家族の死を悔やんでいた俺にとって、それは天啓にも等しいものだった。
『ガルー』がいれば、俺の家族のように死ぬ人はいなくなるのかもしれない。
それからはずっと『ガルー』について研究している。
知れば知るほど、『ガルー』は可能性に満ちた素晴らしい種だと思うようになった。
どんな難病も、怪我だって、『ガルー』を用いれば治療することができるのではないか?いや、できるに違いない。
『ガルー』さえいれば、もう俺の故郷みたいな悲劇は起きないだろう――――]