[その姿を目にして、僅かに瞳が揺れる。
震える指を伸ばせば、青白い頬に触れた。
ギィ、と唇の形が彼の名を呼ぶ。]
本当、貴方は自分勝手な方だ。
私よりもなんて、きっと世界中で貴方一人だけです。
[手の傷は既に塞がっていた。
頬に赤い指が触れても、彼を汚すことはない。
それはまるで、もう二度と交わることのない未来を表しているかのようで、無意識の内に苦笑が零れた。]
思えば、今日は起きた時からおかしい日でした。
不思議なことというのは続くものなんですねぇ。
[最期の会話、一方的な呼びかけ。
両親の殺された家にたった一度だけ、足を踏み入れたことがある。
そこに唯一無事に残されていた一冊の本>>0:32は、男に命を呼び戻す術を授けた。
記憶の中の文字をなぞるように、指先を牙で裂き、血のインクを滲ませる。]