[耳を犯す水音。首筋を這う舌と唇の感覚。視界の端に映る男の表情に、女は咽喉を鳴らした。――――理性と本能が葛藤する様の、なんと美しいことか。口では否定を紡ぎながら、視線は首へと注がれる矛盾。衝動に負け、供物を口にしながらも、苦渋に歪み潤む瞳。同族なのにとても人間らしい。その異質さに、まるで此方が虜にされるよう。そんな事を考えながら、目を細め薄く微笑み、男の背をあやすように撫でる。何度も何度もその背をさすり、男の行為を肯定した]